焔摩天真言

 真言は、サンスクリット語のマントラの訳語である。我が国の真言宗の宗名はこれに由来し、密教における諸尊の咒句、咒すなわち一般的に「秘密の言葉」を真言という。
 呪文といえば、神秘的な文句で、呪術にともなうものであるところから、直ちに迷信的なものとして受け取られやすい。が、キリスト教、イスラム教、仏教などの世界宗教をはじめ、いかな る宗教であれ、その宗教に固有の宗教語ともいうべき呪句、呪文をもたないものはない。
 帰依、祈願、信仰の告白と祈り、称名、懺悔、感謝、讃嘆など、そうした宗教的な心情や情操などの表出として、何らかの言語音をともなう語を用いるのはごく一般的な宗教現象である。
 イスラム教でアッラーの神にささげる「アッラー」、キリスト教の「アーメン」、仏教やヒンズー教の「オーム」、「ナモー(ナマス・南無)、スヴァハー(娑婆呵(そわか))」などは一 般によく知られているとおりである。
 密教における真言はあらゆる諸尊が法身の顕現であるという立て前からして、諸尊が説く教え、すなわち言葉は、ことごとく法身の永遠なる真理の言葉、真実語にほかならない。
(密教では、真言の場合は「咒」、呪術的現世利益的なマジナイ言葉の場合は「呪」を用い、厳密に区別することを断っておきたい)

真言:ノウマクサンマンダボダナンエンマヤソワカ

訳)あまねく諸仏に帰命いたします。とくに焔摩天に帰命したてまつる。スヴァハー。


参考文献 真言・梵字の基礎知識 大法輪閣

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